ラグビー試合中にプレイヤーがボールを意図的にフィールドの境界外に蹴るシーンは一般的です。
観客の中には、「なぜ故意にフィールド外にボールを蹴るのか？」や「ボールが相手に渡るのは構わないのか？」と疑問に思う人も多いでしょう。
この技術はラグビーの特定のルール、特にパスは後ろ向きにしかできないというルールと、領域争いが極めて重要である点に由来します。
ここでは、ボールをフィールド外に蹴る主な理由について説明します。
試合の最終ブザーが鳴ってからもプレーが続くことがあり、その時にボールを外に蹴り出すことで試合を終了させるケースがよくあります。
この行動の背景について詳しく掘り下げてみましょう。
ボールをフィールド外に蹴る戦略的な価値
ラグビーにおいて、ボールをフィールドの外に蹴ることは、陣地確保において非常に効果的です。
自分の陣地で長くプレーすると、相手に得点のチャンスを与えてしまう可能性があります。
自陣の深い場所で反則を犯すと、相手にペナルティキックのチャンスを与えるリスクが伴います。
そのため、プレーの舞台を敵陣に移すことは、戦略的に重要です。
ラグビーのルールでは前方へのパスが許されていないため、ボールを前進させるにはキックが有効な手段です。
このテクニックは「タッチキック」と呼ばれ、タッチラインを超えた場所からゲームが再開されます。
相手がラインアウトを行うことになりますが、敵陣に近い場所でプレーすることが有利とされます。
場合によっては、ペナルティキックを利用して意図的にボールを外に蹴り出し、自陣からゲームを再開することがあります。
「タッチ」とその戦術的役割
前述のように、敵ゴールに近い場所でのプレーが有利です。
ここでは、「タッチ」という戦術に焦点を当てます。
「タッチキック」と「タッチ」
「タッチキック」とはプレイヤーがボールをタッチラインを越えてフィールドの外に蹴る行動を指し、主に戦略的に相手陣深くにボールを送るため、またはプレイを一時停止してラインアウトを引き出すために使用されます。
「タッチ」とはフィールドの外、つまりタッチラインを越えた状態を指します。
ボールが選手によって外に出された場合、ラインアウトでの再開が行われます。
「タッチキック」は具体的な蹴る行動を示し、「タッチ」とはボールがフィールド外に出た状態全般を指す用語です。
「タッチ」の形式
- 直接タッチ
22メートルラインを超える地点から蹴ったボールが直接サイドラインを越えた際、その場所からプレーがリスタートされるのが直接タッチです。
この場合、キッカーには不利であり、相手チームがその場所でラインアウトを実施します。
- 地面を経由するタッチ
22メートルラインを越える地点から蹴った後、ボールがバウンドしてサイドラインを越えた場合、バウンドした地点から対戦相手のラインアウトが行われます。
このようなプレーでは、チームは大きな距離を獲得することが可能です。
- 22メートルライン以内のキック
22メートルライン内から蹴られたボールがサイドラインを越えると、バウンドの有無にかかわらず、その地点から敵チームのラインアウトがセットされます。
特に自陣の深い位置から蹴った場合、チームは大きな距離を得ることができます。
試合終了時のキックの重要性
ラグビーでは、時間が完全に終了してもプレーは続行されるため、試合の最後にボールをフィールド外へ蹴り出す必要があります。
ファウルが発生するか、ボールがプレーの範囲外へ出るまで試合は終了しないため、この行為は試合の最終的なプレーとして極めて重要です。
2019年ラグビーワールドカップ日本大会の戦略
2019年のラグビーワールドカップ日本大会で、日本チームは自分たちのペースでプレーを進め、試合の最後にボールを外に蹴り出して勝利を確実にしました。
試合終了のサインが鳴った後でもプレーが続くため、意図的にボールを外に蹴り出すことでゲームを終了させる戦略が必要でした。
特に対アイルランド戦では、敗北を最小限に抑えつつ、ポイントを確保するための計略が見られました。
ラグビー戦術のまとめ
ラグビーにおいて、試合の終盤にボールをフィールド外に蹴る戦術は、ゲーム終了の判断を選手が行う上での重要な戦略とされます。
初心者には理解しづらいかもしれませんが、この方法は、地位確保、リスク管理、勝点獲得など、ラグビーの複雑なルールやポイントシステムを効果的に利用するために用いられます。
